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画像:光輪寺のサクラ_1

 ↑↓光輪寺にあったサクラ

画像:光輪寺のサクラ_2


画像:照蓮寺のサクラ_1

 ↑↓照蓮寺にあったサクラ

画像:照蓮寺のサクラ_2


画像:御母衣湖

 ↑御母衣湖
名称 荘川桜 (しょうかわざくら)
名称の典拠 現地の樹名板(注1)
樹種 エドヒガン
樹高 20m/21m(注2)
目通り幹囲 5.9m/4.9m(注2)
推定樹齢 300年以上(注2)
所在地の地名 岐阜県高山市荘川町中野(注3)
 
〃 3次メッシュコード 5436−17−05
 
〃 緯度・経度 北緯36度05分25.4秒
           東経136度56分20.3秒(注4)
岐阜県指定天然記念物(1966年12月13日指定)
撮影年月日 2005年5月4日

注1)きれいな筆文字を陰刻したもの。設置者及び設置年月不詳(荘川桜の所有者たる電源開発株式会社が設置した?)。岐阜県教育委員会が設置した案内板の方は「荘川ザクラ」とカタカナ。国の命名法に準じたのだろうが、このようなカタカナの使い方には、どうも馴染めない
注2)環境庁「日本の巨樹・巨木林 東海版」による。いずれも前者が光輪寺のサクラで、後者が照蓮寺のサクラ
注3)2005年2月1日、大合併で高山市となった。旧行政区は大野郡荘川村
注4)これは光輪寺にあった桜の位置





 昔の美濃と加賀・越中を結ぶ長い国道が156号。その沿線、御母衣湖のほとりにエドヒガンの巨木が2本立っている。
 これら2本のサクラは、その巨木ぶりもさることながら、人の巨木とのつき合い方、あるいは保護活動の歴史を語る上で、忘れることのできないサクラなのだ。
 せつない今次戦争の痛手からなんとか立ち直り、高度成長期に移ろうとする前夜、日本各地に、それまで見たこともないような巨大ダムの建設が相次いで始まった。
 ここ庄川(しょうがわ)上流域にも、当時日本最大のロックフィル・ダム、御母衣(みぼろ)ダムの建設が始まろうとしていた。堤高131m、堤長405m。ロックフィル・ダムとしては2005年現在でも、まだ日本一の貯水量を誇る巨大ダムだ。
 このダムが完成すると、4地区、230戸が湖底に沈むことになっていた。
 自らも住民との補償交渉に直接あたった電源開発初代総裁高碕達之助氏は、水没地区の様子を目に焼き付けたいと、ある日、集落を訪れた。
 そこで偶然出会った光輪寺の大桜に、「水没から救いたい」との強い思いが湧き上がるのを禁じ得ず、同行した社員と住民に、思いを熱く語ったという。
 移植を決意した高碕氏は、早速、何人かの専門家を訪問した。しかし返事はすべて否定的であった。そんな大木を移植することなど不可能だというのである。
 高碕氏は諦めなかった。神戸で「桜博士」と呼ばれていた笹部新太郎氏を口説き落とし、当時日本一と称された庭職人丹羽政光氏を計画に引き入れて、奇跡に挑戦する準備が整った。
 1960年11月15日、移植作業が始まった。作業は時間をかけて慎重に行われ、ついに同年12月24日、完了した。
 作業が首尾良く成就したのは言うまでもない。移植された2本のサクラは、今なお元気に花を咲かせてくれている。(以上の話については、MIBOROダムサイトパーク内に詳しい説明が掲示されている)
 この話には、続編別話がある。
 このサクラの横を、2002年まで、名古屋と金沢を結ぶ長距離バス路線が通っていた。そのJRバスの車掌、佐藤良二さんの物語である。
 ほど近い白鳥町出身の彼は、この荘川桜移植の事実と、サクラに心を寄せ続ける水没住民の姿に心を打たれ、太平洋と日本海を結ぶこのバス路線を、サクラの街道にしようと一念発起した。
 壮大な計画である。一人の力でどこまで及ぶものか。周囲からは冷笑する声も聞こえたに違いない。
 1966年、最初の1本を植えたのち、ほぼ毎年200本のペースで苗木を植え続けた。車掌乗務のかたわら。あるいは休日、バイクに苗木をくくりつけて。かかった費用もたいへんだったであろう。
 荘川桜の実生苗を得ることも心がけた。自宅に苗床を作り、数多の失敗の末、ついに荘川桜の2世苗を得ることにも成功した。
 次第に賛同者も生まれ、順調に計画が進むかと思われた矢先、彼を病魔が襲う。そして1977年、彼は47歳の短い生涯を閉じてしまう。

 これら2話は、自然保護とは、机上の論でなく、血の通った出来事なのだ、と私に教えてくれているように思われる。
 いままでも、何度も会ったことのある荘川桜だが、花の季節ではなかった。
 インターネットの満開情報を待って訪れた。しかし、ちょっと遅すぎたようだ。それに、今年はそもそも花芽そのものが少なかったようだ。
 花は少し残念だったが、今年も元気そうに芽吹いてくれたことに、十分満足だった。
 
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